新型コロナウイルス感染症を乗り越えるために ~日常生活の注意点~

本サイトをご覧の皆さまへ~特別メッセージ~

新型コロナウイルス感染症を乗り越えるために ~日常生活の注意点~

自治医科大学 臨床薬理学部門・循環器内科学部門 教授
今井 靖 先生

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、本サイトをご覧の皆さまからも、さまざまな質問をいただいております。そのなかには、基礎疾患をお持ちの方、ペースメーカーやステントを入れておられる方も多く、コロナ禍の生活には不安が多いことと思います。そこで、今井靖先生(自治医科大学 臨床薬理学部門・循環器内科学部門 教授)が、皆さまから寄せられた質問をもとに、日常生活の注意について、特別メッセージを寄稿くださいました。

新型コロナウイルス感染症についての最新情報は、内閣官房ホームページ(https://corona.go.jp/)をご参照ください。

国内外を問わず、新型コロナウイルス感染症が遷延(せんえん:収束せず長引くこと)・拡大という状況下にあり、不安な日々を過ごされていると思います。感染されても無症状のことがあるわけですが、このウイルスは鼻・のど・気管支・肺などの呼吸器に障害を与え(嗅覚・味覚障害が起きるのも特徴)、ときには心臓・血管を含めた全身に症状をもたらす可能性があると報告されており、特別の配慮がなされています。

何よりも大事なことは、「感染しないこと」「万が一、ご自身が感染したとしても他者にうつさないこと」であり、一人ひとりが以下のようなことに注意する必要があります。

・人との距離を十分に保つ(2m以上が望ましい)
・うがい(お水、お茶、イソジンなどいずれも有用と思います)
・手洗い(石鹸でしっかりと30秒以上かけて指先・指の間も丁寧に洗う)
・人が集まる場所や医療機関などではアルコールなどの消毒薬で手指消毒を励行する
・人が集まる場所ではマスクを着用する
・複数名で食事をするときには真正面で向き合った席を避け、互いに距離を取る
-飲み食いをするときには静かに(黙食)
-食後の会話では大声を出さない
-飲食中も、会話をする際は、マスクをした状態で話す など

飲酒の場合、少しお酒が入ると緊張がほぐれて大声を出したり、互いの距離が密になってよろしくない場合があるため、お酒の量もひかえめにされるようお願いします。

このホームページをご覧になっている皆さまのなかには、動脈硬化の危険因子である高血圧、糖尿病、脂質異常症、あるいは肥満などの指摘を受けておられる方や治療中の方、あるいは狭心症・心筋梗塞などの心臓病、脳梗塞などの脳血管障害を患われた方もいらっしゃると思います。治療中の病気をもっておられる方、あるいは過去に大きな発作を経験し、その後の再発予防が必要な方が、いわゆる「“基礎疾患”がある方」となります。
心臓・脳の病気以外にも、たとえば“がん”の治療中、あるいは“がん”にかかり外科手術や化学療法・放射線療法を受ける(あるいは受けた)方も基礎疾患があるとされます。一般論として動脈硬化の危険因子を持っておられたり、動脈硬化による疾病のお持ちの方は、新型コロナウイルスに感染すると、中等症~重症になりやすいといわれているため、感染予防にとくに留意されることが必要です。

また、日々の生活の中での血圧・心拍数の測定、体重測定(感染予防の観点から外出や運動を控え体重増加がある方が、少なからずおられます)に加えて、毎日の体温測定もぜひ行っていただければと思います。毎日の健康の目安を把握しておくことが、ご自身、そして担当する医師・看護師など医療関係者にとって大変役立つ情報となります。
もし、新型コロナウイルス感染症を疑う症状(発熱、強い倦怠感、せき、呼吸困難など)があらわれた際には、地域の相談窓口やかかりつけ医にご相談ください。

「密を避けて、不要不急の外出は控えるように」とありますが、自宅にずっと閉じこもっていると運動量が減り、動脈硬化の発症、あるいは再発のリスクとなるほか、筋肉や骨の量が低下し、全身の体力の低下、骨折が生じやすい状況などが起きてきます。人ごみを避けることに留意しながら、可能であれば1日に30分以上の散歩・外出の時間を確保されてもよいでしょう。あるいは、自宅にいながらでも体操やストレッチ、体をよく動かしながら家事を行うなど、適度な運動を行うことが重要です。

運動に加え、コロナ禍の生活としては、塩分/カロリー/脂分を抑えた食事を心がける、十分な睡眠をとる、直接お会いになれなくともご家族や友人、仕事仲間など人対人のコミュニケーションを保つことが、身体・精神の両面から重要だと考えます。電話やインターネットの活用はこのようなときに威力を発揮しますので、ぜひご活用ください。

皆さまには、かかりつけ医がおられるかと思いますが、体調が安定している場合、直接診察を行わなくとも電話で話したりインターネットを介して診察を行い、処方箋をお近くのかかりつけ薬局に送付(薬局によってはご自宅に薬を届けてくれるところもあるようです)されるといった「遠隔診療」も、このコロナ禍で認められております。病院・医院にかかることに躊躇されることもあるかと思いますが、電話再診や遠隔診療などの方法もありますので、詳しくは主治医の先生、あるいは医療機関の担当者の方とよく相談なさってください。

薬は欠かすことなく継続して服用することが肝要です。とくに人工弁や弁膜症、心房細動で、血栓症の予防のためにワルファリン(月に1回程度の血液検査でPT-INR値測定が必要)や直接経口抗凝固薬(DOAC)を服用されている方は、主治医の指示に従ってきちんと服用するようにしてください。また、冠動脈にステントが入っている方など、抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレル、プラスグレルなど)を飲んでおられる方は、飲み忘れた際に、重大な血栓症(血のかたまりができて、脳や心臓の血管を閉塞させる)をきたすリスクがあります。飲み忘れのないように注意し、元気に過ごしていきましょう。