さあ血圧を測りましょう。自分の血圧を知りましょう。

さあ血圧を測りましょう。自分の血圧を知りましょう。

日本高血圧協会 理事
東北血圧管理協会 理事長
東北大学 名誉教授
今井 潤(いまい・ゆたか)先生

2018年9月、北海道旭川市の旭川市民文化会館において、第41回日本高血圧学会総会 市民公開講座が開催されました(共催:第41回日本高血圧学会総会/日本高血圧協会/オムロンヘルスケア株式会社、後援:カゴメ株式会社/北海道テレビ株式会社)。
テーマは、「健康寿命延伸は高血圧管理から ~さあ家庭で自分の血圧を測りましょう!~」。講演2では、今井潤先生(日本高血圧協会 理事/東北血圧管理協会理事長/東北大学 名誉教授)が、「さあ血圧を測りましょう。自分の血圧を知りましょう。」をテーマにご講演。30年にわたる家庭血圧の研究成果をもとに、家庭血圧を測定するメリットや自分の血圧を知ることの重要性についてお話しされました。高血圧の診断や治療には、診察室で測る血圧よりも家庭で測る血圧のほうが実は有用であること、高血圧は心臓病や脳卒中だけでなく、認知症とも関連があることなども紹介され、参加者は驚いたように聞き入っていました。

日本人の高血圧

日本人の高血圧は、降圧薬の進歩などもあり、過去50年で軽症化してきました(図1)。重症な高血圧は減少し、直接死につながるような重症の脳卒中は減少しましたが、人口の高齢化に伴い、また、不十分な高血圧の診断や治療を受けている人が多く、軽中等症高血圧の患者さんの数は、むしろ増加しています。そして、軽中等症高血圧が長期に持続した結果、高齢者に脳血管障害や、それに関連した認知症が発症してきます。こうした状況は、健康寿命を損なうことから、今日の高齢社会で大変深刻な問題を引き起こしています。

若中年期の高血圧が将来の認知機能低下に深く関係すること(図2)、若中年期からの高血圧管理が、認知機能低下を抑えることなどが、今日、明らかにされております。したがって、若中年期より、自分の血圧が正常なのか、高いのかを知り、高血圧を予防し、早期に高血圧を診断し、早期に十分な治療を行うことが大切です。そのためには、家庭で血圧を自己測定することが、大変有効です。

家庭血圧測定の意義

家庭血圧は、診察室血圧や健診時の血圧に比べて、皆さんの血圧の状態をより適格に把握します。ことに、日常の生活習慣や日常のさまざまなストレスに対する血圧の変化を容易に捉えることができます。なかでも、高血圧の診療上、きわめて大切な情報である白衣高血圧(医師や看護師の前で高くなってしまった血圧)や、診察室血圧では捉えられない高血圧(仮面高血圧)の診断に不可欠です(表1)。また、家庭血圧により高血圧の薬に対する効果を正確に評価することが可能です。その結果、家庭血圧が高血圧診療に用いられると、日本の医療費が大幅に削減されると予想されています。

家庭血圧測定の方法

家庭血圧測定では、いくつかの測定条件を守ることが必要です。原則的には、上腕の腕帯を用いた血圧計が推奨されます。

腕帯を装着する際のポイント

  • 腕帯は常に心臓の高さにする。
  • 厚地の着衣の上に腕帯を巻いてはいけない。
  • 腕帯の上下に気をつける。

測定方法

  • 朝:起床後1時間以内・排尿後・朝食前・服薬前・座位で1~2分、安静にした後
  • 夜:就床前・座位で1~2分、安静にした後

⇒それぞれ1~2回測定して、その値はすべて記録用紙に記載する。

測定値は自分での判断材料にもなりますが、医療者に見せて判断を待つことが大事です。

おわりに

今日、メディアを介したさまざまな誤った健康情報、誤った高血圧に関する情報があふれております。しかしながら、「血圧は高ければ高いほど、危険であること」「高血圧の治療を受け、高血圧の薬を飲めば、この危険が減少すること」の2点は、厳然たる事実です(表2)。
さあ、自分で自分の血圧を測り、自分の血圧の状態を知りましょう。