血管を若々しく保つ食事とは?

血管を若々しく保つ食事とは?

千葉大学医学部附属病院 管理栄養士
野本 尚子 先生

健康な血管は、心臓病や脳卒中のリスクを低減します。そのため、まず大事にしたいのが食生活ですが、ちまたでいわれている健康法はさまざまで、中には医学的な根拠がないものも。千葉大学医学部附属病院の管理栄養士・野本尚子先生に、正しい食生活のアドバイスをいただきました。

①「抗酸化作用」のあるフルーツを食べましょう

フルーツをよく食べている人は、総死亡率、循環器疾患や脳卒中のリスクが低下するという報告があります。理由の一つに考えられているのが、ビタミンCやリコピン、カテキン、エラグ酸といった「抗酸化作用」のある栄養素。老化の原因となる活性酸素を抑制するといわれています(抗酸化物質のあるフルーツはこちら)。特にビタミンCは、動脈硬化の原因となる悪玉コレステロールの酸化を防止します。

食物繊維の中でも、フルーツは水溶性食物繊維を多く含んでいるのもポイントです。水溶性食物繊維は悪玉コレステロールのはたらきを低下させる作用があります。食物繊維をたくさんとっている人は、冠動脈疾患と心血管疾患による死亡率が低下するとも報告されています。

ただし、フルーツには多くの糖類が含まれており、食べすぎると肥満の一因にも。1日200g程度を目安にしましょう。

②サプリメントは万能ではありません。自然の栄養素をしっかりとって

「抗酸化」「アンチエイジング」といったワードを売り文句にしたサプリメントも、たくさん登場しています。手軽なサプリメントさえ飲んでおけば、食品の栄養をとらなくてもよいのか? と思ってしまいがちです。

しかし、サプリメントはあくまで補助的なもので、本来の栄養は食品からバランスよくとるべき。フルーツの摂取量と総死亡率には関連がありますが、「抗酸化物質をサプリメントで摂取しても、死亡リスクを下げる効果は得られなかった」との報告もあります。

果物にはビタミン、ミネラルのほか、食物繊維やポリフェノール、カロチノイドなど、さまざまな栄養素が含まれていることが、大きな違いです。

③「ノンカロリー」の清涼飲料水にもカロリーはあります

清涼飲料水は100mlで10g以上の糖類が含まれていることが、珍しくありません。嗜好飲料の糖類摂取量は、肥満、中性脂肪、血糖上昇との関連が報告されています。夏場の暑い時期、特に1時間以上の運動をする場合には、4~8%程度の糖分を含んだ飲料(スポーツドリンクなど)が疲労の予防に役立ちますが、とりすぎは禁物です。

「ノンカロリー」「糖類ゼロ」など、カロリーや糖類が控えめなドリンクにも、注意が必要です。農林省の規格基準では、カロリーが100mlあたり5kcal未満、糖類が1.5g未満なら、清涼飲料水に「無」「ゼロ」「ノン」「レス」「フリー」の文言を付けられることになっています。「低」「ひかえめ」「少」「ライト」「ダイエット」「オフ」(「低カロリー」「カロリーオフ」など)と表示されている場合は、100mlあたり20kcal未満、糖類(ショ糖、果糖、ブドウ糖、乳糖、麦芽等)は100mlあたり2.5g未満を含みます。

人工甘味料は甘味度が強いので、糖類の量を減らしてカロリーを抑えても、甘い飲料をつくることができます。しかし、糖類やカロリーが、本当にゼロであるわけではないのです。

④食事の飲み物は動脈硬化を防ぐ緑茶、コーヒーがおすすめです

緑茶やコーヒーを飲む人は、脳や心臓の血管の病気による死亡リスクが低いことがわかっています。緑茶は特に女性の心筋梗塞などの死亡リスクを、コーヒーは特に男性で脳卒中の死亡リスクを低減します。

カフェインは脂肪の燃焼を促進しますし、コーヒーのポリフェノールには抗酸化作用があります。緑茶、コーヒーのほか、ウーロン茶も含め、動脈硬化の進行を抑えるといわれているのです。

砂糖やミルクを使わなければ、カロリーも本当にほとんどありません(清涼飲料水の「カロリーゼロ」とは違います)。血管の健康のためには、食事や小休止の飲み物は、緑茶やコーヒーがおすすめです。

⑤外食ではチャーハンより定食を選んでください

食品の3大栄養素は、「炭水化物」「脂質」「たんぱく質」。脂質は1gあたり9kcalと、炭水化物やたんぱく質の倍以上のエネルギー量があるので、少量でも太りやすくなります。

脂質は中性脂肪を増加させ、ひいては動脈硬化の一因にもなります。主食に味付けされているチャーハン、スパゲッティ、ピザなどは脂質が多くなり、結果的にカロリーをとりすぎになりがち。小鉢で野菜の煮物などがついた和食の定食のほうが、油が控えめで、栄養バランスも取りやすくなります。

⑥料理は計量して作りましょう

自分で料理する場合、目分量で作ると、つい余分な油や調味料を入れてしまいがち。計量スプーンなどできちんと量りましょう。食べている量を実感することで、余分な塩分や脂質をカットする意識にもつながります。

塩分の代わりに天然のダシで素材のうま味を際だたせたり、酢で刺激を加えるなど、おいしくアレンジしてください。