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血圧をコントロールして若さを保ちましょう

福岡国際医療福祉大学 学長/日本高血圧協会 理事
今泉 勉 先生

現在、わが国には約4,300万人の高血圧患者さんがいるといわれています。その数は、歳をとるにつれて増え、60~70歳では実に6~7割が高血圧といわれています。症状なく進行し、脳卒中や心筋梗塞といった重大な病気を引き起こす高血圧を防ぐにはどうしたらよいのか、2019年5月に久留米市で行われた「世界高血圧の日」市民公開講座(共催:日本高血圧協会、第8回臨床高血圧フォーラム、第55回日本循環器病予防学会、木村記念循環器財団、久留米大学循環器病研究所、日本心臓財団、協賛:オムロンヘルスケア株式会社)での今泉勉先生(福岡国際医療福祉大学 学長)の講演をご紹介します。


*「世界高血圧の日」は、国際高血圧学会の一部門である世界高血圧リーグにより、高血圧およびその管理に関する啓発を目的として2005年に創設され、2007年より日本も参加、その日を中心に日本高血圧協会と日本高血圧学会では市民公開講座を全国各地で開催しています。

どこからが高血圧?

高血圧の診断基準をごぞんじですか?収縮期血圧(上の血圧)か拡張期血圧(下の血圧)のいずれか一方でも診断基準を上回れば、高血圧と診断されます。
病院で測る血圧と家で測る血圧では、家で測るほうが低めに出ますので、図1を参考にしてください。

図1 高血圧の診断基準

血圧は、就寝中は低く、起床にかけて高くなり、顔を洗ったり、食事をしたり、排便したりすると、さらに上昇します。血圧は一日中変動しており、今日と明日でも違いますので、1回の測定値に一喜一憂しないようにしましょう。

家で血圧を測る際は、基本的に上腕で測ります。手首や指で測るタイプの血圧計は、正確性に欠けることがありますので、上腕式の血圧計を用いて、毎日、朝晩測定してください。

『高血圧治療ガイドライン』には、「1度の測定で原則2回測定し、その平均をとる」と書かれています。なかには、納得する値が出るまで何度も測る人がいますが、測定は1~2回にして、忙しくても毎日続けるようにしましょう。とくに、血圧は朝が一番高く、脳卒中や心筋梗塞も朝方に起こりやすいため、朝の血圧をきちんと管理することが大切です。

高血圧はなぜこわい?

高血圧がこわいのは、「動脈硬化」を進行させるからです。動脈硬化とは、血管が硬くもろくなった状態で、血液の通り道が狭くなったり、完全に詰まったりしてしまいます。排水管も長年使っていると、汚れが詰まって流れにくくなるように、こうした変化が人間の血管でも起こっています(図2)。

図2 下水管と動脈硬化を起こした血管

そして、動脈硬化が進行すると、図3のような重篤な病気を引き起こします。 現在、日本人の約30%が心血管疾患(脳卒中や心筋梗塞など)で亡くなっています。また、脳血管疾患は、寝たきり原因の1位であり(図4)、寝たきりや要介護にならないためにも、高血圧の予防・治療が重要なのです。

図3 動脈硬化が原因で起こる病気
図4 寝たきりになる原因

動脈硬化の原因は、高血圧、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病のほか、喫煙などがありますが、これらのリスクファクターには共通点があります(図5)。ひとつは、「気づきにくい」ことです。血圧もコレステロールも高くても症状がありませんし、糖尿病も初期には無症状です。症状なく進行し、深刻な病気を引き起こすことから、「サイレントキラー」(静かなる殺人者)と呼ばれることもあります。二つめは、「合併症を招きやすい」ことで、放置したままでおくと、脳卒中や心筋梗塞の危険が高まります。さらに、これらは「いくつも重なりやすい」という特徴があり、ひとつ重なるごとに、倍々ゲームのように脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まっていきます。

図5 頻度の高い生活習慣病(脂質異常症・高血圧・糖尿病)の特徴

高血圧の予防は生活習慣の改善から

高血圧の発症には生活習慣が大きく関係しているため、「生活習慣病」とも呼ばれます。高血圧はもともと遺伝的な体質に、不規則な生活習慣(肥満、塩分過多、運動不足、タバコ、飲酒など)が加わって発症します。

予防には、ふだんから血圧を測ることが大切です。家庭でも血圧を測り、135/85mHg以上が続いたら、きちんと受診するようにしましょう。

また、食事・運動に気をつけること、とくに減塩は、高血圧の予防にもっとも重要です。食塩は1日6g未満を目標に、ラーメンなどの麺類は汁を飲まない、しょうゆなどの調味料はなるべく使わない、加工食品(かまぼこなど)は減らす、といった減塩対策を心がけましょう。

アルコールも重要な危険因子です。適量はワイン→グラス1杯、日本酒→1合、ビール→缶・中ビン1本で、それ以上は血圧が上昇します。適量を守れない人は飲まないほうがよいでしょう。

生活習慣の改善だけで血圧が下がらない場合は、薬物療法が必要です。最近は、1日1回の服用で副作用も少ない降圧薬もあり、長期間使用してもほとんど問題ないといわれています。血圧が安定すれば薬を減らすこともできますので、きちんと服用を続け、目標値まで下げましょう。

降圧目標値
収縮期血圧 拡張期血圧
診察室血圧 130mmHg 未満 80mmHg未満
家庭血圧 125mmHg 未満 75mmHg未満

日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会編,『高血圧治療ガイドライン2019』



最後に、あなたの生活習慣から、「おじさん度」「おばさん度」をチェックしてみましょう。


    おじさん・おばさん度チェック

    ①いつまでも若いと思っている
    ② 食べ放題が好きである
    ③ 異性の目を気にしない、恋はもう関係ないと思っている
    ④ バス、電車ではわれ先に座る
    ⑤ いつも独り言をいっている
    ⑥ 夜更かし、テレビ、間食が大好きである

①にあてはまる人→ いつまでも若くはありません。生活習慣病が忍び寄っています。
②にあてはまる人→ カロリーのとり過ぎです。まして、持ち帰ってはいけません。
③にあてはまる人→ 腹部肥満、メタボは生活習慣病の最たるものです。体型を気にしましょう。
④にあてはまる人→ 運動不足です。時間をみつけて、体を動かしてください。
⑤にあてはまる人→ ストレス発散を心がけましょう。
⑥にあてはまる人→ 運動不足、カロリーのとり過ぎに注意しましょう。


「健康でありたい」「若く美しくありたい」「生き生きと楽しく暮らしたい」「老いて人に迷惑をかけたくない」―。そのためには、血圧を下げて血管を若く保つことが大切なのです。

まとめ
  • (1) 高血圧は動脈硬化を進展させ、脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めます。
  • (2) 高血圧の予防には、減塩をはじめとする生活習慣の改善と家庭での血圧測定が重要です。
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