動脈硬化予防に役立つ検査やアプリ

虎の門病院 名誉院長
大内 尉義 先生

大内 尉義 先生(虎の門病院 名誉院長)

「動脈硬化」は、動脈が硬くなるという意味ですが、文字通り、動脈がしなやかさを失って硬くなり、高血圧や動脈瘤などの素地になるということと、心臓や脳などの、中くらいの太さの動脈の内膜が肥厚して内腔が狭くなり血流が阻害され、心筋梗塞や脳梗塞を起こす、という二つの病態があります。それらをどのよう診断していくのかについて、多様な検査があることを、桑原先生からお話いただきました。

今井先生からは動脈硬化のリスクである高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症を血液の検査でどのように診断していくのかについて、新しい検査方法も含めてご紹介いただきました。

中村先生からは、動脈硬化のリスクの評価の一つとして、生活習慣、特に食習慣と高血圧の関係ということで、塩分摂取、カリウム摂取の二つに着目した「尿のナトリウム濃度とカリウム濃度の比(尿ナトカリ比)を測定する検査が、実際に社会実装され、血圧管理における、その有用性に関するデータも積み重なってきているという話をいただきました。

このように、動脈硬化をいろいろな方法で把握するのが、動脈硬化の診療において基本的に一番大切なところですが、ただ、こういった検査を全てをやればいいというわけではなく、個々人の状況を把握して、その方に必要な検査をうまく組み立てていくことが必要ではないかと思います。

動脈硬化のリスクを評価して、さて動脈硬化にならないように生活習慣を変えましょうと言ってもなかなか難しいのが現状です。      

この行動変容を促すために、第一三共の安田部長からは、最新のデジタル技術で開発された、実際の行動変容につながるアプリを紹介いただきました。スマートフォンのアプリで、実際にどのくらいのナトリウムを摂っているのかを見える化できることや、それにより、実際に血圧が下がるというデータも出ていることを伺いました。

本日のシンポジウムでは、動脈硬化の診断や予防に役立つ検査、さらに行動変容を手助けするアプリについて、最近の新しい動向も含めて、シンポジストの皆様から興味深いお話をいただけたのではないかと思います。本日のシンポジウムが、今後、動脈硬化を予防啓発、そして健康長寿社会の構築のために貢献できればと思います。

(注)本内容は、2025年12月13日に開催されたSWC協議会第5回動脈硬化予防啓発分科会シンポジウム「動脈硬化予防に役立つ検査やアプリ」でのまとめをもとに作成しました。