心不全は「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と定義されています。心臓は全身に血液を送るポンプのようなはたらきをしていますが、このポンプ機能が低下して十分な血液を全身に送り届けることができない状態、あるいは全身から戻ってくる血液を受け入れることができない状態を指します。
十分な血液を全身に送り届けることができなくて起こる症状としては疲労感、脱力感、手足の冷えなどがあり、全身から戻ってくる血液を受け入れることができなくて起こる症状としては息切れ、呼吸困難、むくみ(浮腫)などがあります。息切れと足のむくみは心不全の初期から多くにみられます。
病気の経過によって、心臓の機能低下が急に生じて早い経過で呼吸困難などの症状が出る急性心不全と、機能低下が徐々に表れて慢性的に息切れ、むくみを認める慢性心不全に分けられます。
治療は一人ひとりの状態に合わせておこないます。急性心不全では状態の改善を最優先とし、過剰となった水分を排除するための利尿薬、心臓への負担を減らすための血管拡張薬、心機能低下が目立つ場合には強心薬投与、薬物に対する反応性に乏しい場合には心臓を助けるための機器(IABP、PCPSなど)を使用します。血液中の酸素濃度が低下する場合、酸素投与、マスク式呼吸補助、人工呼吸器を用いることとなります。
一方、慢性心不全においては患者が長く元気にすごせることを最優先に考えることとなります。心臓の収縮機能が低下している場合には心臓の負荷を減らすための薬物治療をおこないます。具体的にはアンギオテンシン変換酵素阻害薬あるいはアンギオテンシン受容体拮抗薬、β遮断薬、利尿薬、ジギタリスなどを用いますが、最近ではSGLT-2阻害薬、アンギオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(ARNI)などの新しい薬剤が心不全治療薬として加わりました。心機能が保たれているにもかかわらず心不全を生じた患者さんでは原因などを考慮しつつ患者さんそれぞれに合わせた治療を選択します。 加えて生活習慣の見直しや、食事療法が必要となります。心臓が悪くなる原因には、高血圧、心筋梗塞、心筋症、弁膜症、不整脈、先天性疾患などがあります。こうした原因がはっきりしている場合には、心不全の治療のほかに原因疾患に応じた治療をおこないます。